高校時代と最近読んだ数冊しか知らないが今回のアガサ・クリスティーの「ビッグ4」は他の作品と違った。少し前読んだ「春にして君を離れ」も他作品と違うと感じたが、この二つの作品の世界はまるで正反対だ。以下ネタバレ注意
違い
あまりに読みづらかった。理由の一つは事件が数多く起こり人が死ぬ。それが一見つながりがないから頭がついていけなかったのかもしれない。イギリス内務大臣、フランス首相、駆逐艦が出てくるなどスケールの大きさが目立った。それが自身の中で逆に大味な印象を強めた。
又、友人ヘイスティングズ大尉がポアロの様子を表現しているが彼の揺れる心情がそのまま出ていて落ち着かない。”読者のみなさんが私だったら、どうしますか?”と問いかけられた時は非常に困惑した。他の作品にもヘイスティングズ大尉は登場するがこれほど読みにくいことはなかった。P335中P230ページまで読むのに時間がかかった。
携帯電話がなかった高校生の時読んでいたら全く違ったのかもしれない。
強引さ
”ビッグ4”の第四番目の重要人物である殺し屋がそれまで起こった殺人を全て自ら担当し、さらに彼が変装自在だと結論付ける場面が少々強引で引いた。大きな組織に所属する殺し屋は対象人物の環境に溶け込み仕事を一人で行うだろうか。それに物証や目撃者など詳細がない状況で断定するさまに違和感半端なかった。
刺激
心がざわついたのはポアロの双子の兄アシール・ポアロが”登場”したことだ。
ビッグ4,ヘイスティングズと同様最後まで騙された(笑)
推理小説に求めていること
この本で自分が推理小説に強く求めている”あるもの”が分かった。
犯人が誰かということも興味があるけれど、色んな立場の人間の感情が絡み合った人間関係が表現された作品に心が動くということだ。スケールの大きさではない。「春にして君を離れ」が心から離れない理由がそこにあった。