小学校4年生から三年間市営プールで泳ぎを習っていた時の話。

ブーメランパンツ

プールサイドに体育座りでコーチの話を聞くことが常だった。入りたてはそんなに感じなかったが思春期に近づくにつれ、どうしてブーメランパンツをはくんだろうと思うようになった。目のやり場に困った。顔を上げると目の前にブーメランパンツ。何だかきつかった。

年下男子

弟と同級生の男子によくからかわれた。最初花を模した飾りがついたキャップを被っていたことをネタにされイジられた。ボーっとしていたかもしれない。三年間ずっとからかわれては追いかける日々だった。

三番手

同級生の女子は数人いたが、中でも順番は変わらなかった。万年三番手。二番は平泳ぎ。自由形の自身がどんなに一所懸命泳いでも一度も追い抜くことが出来なかった。悔しかった。平泳ぎよりも自由形の方が早いというイメージがあった為余計苦しくなり悶々としていた。なにが欠けているんだろうといつも考えていた。

コーチ

六年生の時だったと思う。市の水泳大会に参加することになった。自分が出る自由形のレースが終わりパッとしない成績だったものの昇華出来た感じを持てたことでほっとしていた。その時…

コーチに呼ばれた。急に参加できなくなった人の代わりに平泳ぎ100mレースに参加するように言われた。決定事項だ。閉口する時間もない位すぐにスタート地点に行かなくてはならなくなった。

何が起こったか理解できぬままスタートしたが、ドラマの様に奇跡が起きるわけもなく現実は予想を超える惨敗ぶり。ぎりぎりビリじゃなく、堂々のビリ。前の選手と30mは離れていた。みんなの視線を浴びながらのゴール。半分おぼれながらのゴールだった。熱血指導だったから当然”何やってんだ”と怒鳴られるのだろうと思いコーチの前へ。

すると、コーチは…”よく頑張った。すごいぞ。本当に頑張ったな。”と大きな声でみんなの前で褒めてくれた。意外過ぎて感動も何もなくただただ驚いていた。

一生心に残る、自身を造った出来事のうちのひとつだ。結果ではなく、一生懸命臨機応変に対応しようとしたことへの価値を認めてくれた人だった。感動。漫画やドラマではない実体験は物凄い威力を持つ。目の前で起こったことの背景を感じてみようと思う癖がついたのはこのことが影響している。

コーチを尊敬している。深く感謝している。自分もそうありたいと常に思っている。