提示された契約を蹴って最初の撮影が今日あった。キャスト二人、エキストラ三人の五人の予定だったけれどエキストラ一人”とんだ”そうだ。業界用語なのか”とんだ”は突然のキャンセルのことをいうらしい。担当者はお怒りだった。

この撮影の話は契約の話を持ち掛けられる前から声を掛けられていてOKを出していた。契約の件で気まずいこともあって迷ったが参加することに決めた(断る時は撮影の一週間前に連絡することになっている)。気まずい思いが残るのは本意じゃない自分の為に。

5000円を払っての一瞬の出演。今までエキストラはお金を払って出演するものだとは思わなかった。大概はボランティアか多少の金額を頂くものだと思っていたが(^▽^;)色々勉強になる。

ピリピリ

エキストラが一人”とんだ”為かどうかは分からないが担当者のピリピリが空気を強張らせた。それに気付かず彼は緊張するなと言い話をつづけた。本人はその場を和ませ、更に活気づけようとしているらしい。きっと厳しい世界で苦労してきたのだろう。言葉とその場の雰囲気が反比例していくのが悲しかった。

内容はこの業界のこと、事務所のこと、撮影にあたっての心構えなど30分程だ。

契約話の時の自身の事務所への不信感を感じ取ったのだろう、信頼に足る事務所であることを強調していた。でもどう考えても密室で契約させようとするのは詐欺の手口だ(この件は「直感」で記した)。それに契約書は甲乙同じ書類を持つはずなのだ。35万円(当人は15万円)を掛けて作成した契約書はリコール対象なのだろうか。質問が頭の中に広がった。

疑問

お金を掛けずに撮影をするということで外に出た。

もう一人のエキストラと話しながら撮影場所に向かった。彼女は自身が今まで話したことがないタイプだった。でも話すととても実直で優しい感じの人だ。

自身と同じ案件の書類選考を受けていたことが分かった。同じく経験不足が書類選考を外れた理由だった。自身と違うのは彼女は演技ではなく話すことを中心に活動したいということだった。又、レッスンに月一万円払い続けているとのこと。そのレッスンに自己都合ではあるにしても参加できずにいるらしいのだ。問題に感じたのは、払い続けることに彼女は疑問を感じつつもすぐ改善しようとは思っていないことだった。もう少し話したかったがすぐ撮影場所に着き、話が途切れてしまった。

キャスト二人が話している横を通るというのが自身の役割だった。撮影時間1分は掛からなかった。これで3作品に出たけれど段々出演時間が短くなっているのは気のせいだろうか。そのままを受け取ろうとここまで書いていて思った。

OKが出て帰ろうとしたがその言葉にみんな驚いた。もう帰っちゃうの?と聴こえてきそうだった。これは残るのが正解なのだと思いその場に暫くとどまった。

その内天気予報通り雨が降ってきた。

キャストの経験があまりないのかセリフのある二人は様々なことで動揺していた。公園での撮影だった為普通にランニングする人やウォーキングする人が通る。動揺してセリフが途切れた。それに対し”何故やめるんだ”と叱咤する。セリフを間違うと”これくらいのセリフで間違うのかぁ。こんなに少ないのに”と人を硬直させる言葉を担当者は吐き出した。この業界はこれが当たり前なのか。殺伐とした気持ちになった。多分彼はゆとり世代、Z世代には対応できない。そこを変える気持ちもないようだった。

雨が本格的に降ってきた。フードを被り終わるのを待っていた。帰っていいと声がかかった。ホッとしてその場を離れた。

今後

ネットでドラマ収録のためのエキストラ募集がある。近いうちそれに応募してみようと思う。