一週間前職場が移動になった息子からSOSがあった。
20代後半の息子の引っ越しの手伝いをするつもりはなかったが高山市の部屋の床にタイヤ痕がついてしまって動揺していたから行こうと決めた。親が行ったところで状況は変わらないと思ったが自身も床や車のワックスをトライしてもいいのではと周りからの助言を貰い試してみたくなった。
タイヤ痕
雪国に住むと年に二度はタイヤを変える。夏季はスタッドレスタイヤをベランダや物置、車庫に保管するのだが息子は部屋に直に置いてしまっていたらしく気が付いた時にはワックスがかかった床に黒い跡がついてしまっていた。
YouTube、google検索で調べた方法でそれを消そうとした跡があった。カビ取りを塗りラップで暫く置いたり、メラミンスポンジで擦ったりしたらしい。その状態を見た時事前相談して欲しかったと思ってしまった。手当跡がついていた。
他にも洗濯機を置いていた箇所が黒くなっていた。黒カビが床にこびりついていた。大体の賃貸アパートには洗濯パンと呼ばれる受け皿があるものだがそこにはなかった。不思議に思いながらもそのままにしていたのが悔やまれる。
業者見積はこれから出てくるがドキドキだ。本来なら住んでいた本人が全額支払うのが筋だが収入より大幅にお金が掛かるなら援助が必要だと考える。
写真
新居を構える地域に戻り夕食を共にした。高山市よりは観光的にはそれほど有名(飛騨牛など特化した食材がない)ではないため気軽に入れる居酒屋にした。学生時代よく言った”いろはにほへと”で食事したかったが混んでいた為同じビルにあった串屋に行った。
照明が明るく、開店して間もないのか全てピカピカ。また全席個室になっていて嬉しかった。がしかぁし!少々値段が高めだ。飲み放題もあったが量より質にこだわりたかったから止めた。アルコール類はそれほど高いとは感じなかった。
刺身、サラダ、ナスのお浸し、砂肝、皮、いたわさ等いただいた。ビール、赤ワイン、白ワイン(においがきつく自身には合わなかった)も楽しんだ。
酔いが回ってきたころに息子から彼女との将来展望を切り出された。
彼女との結婚を考えている。プロポーズをして婚約指輪、結婚指輪を送ったと聞いた。でも物理的に職場が離れていてこのままでは一緒に住めないから彼女と同じ県か近辺の府県の試験を今年夏受けるとのことだった。その試験に合格できなくて契約社員的な立場になってもその土地で仕事をしたいとの旨だった。
それには閉口した。結婚のために”契約社員”になるなんて親として悲しい。一緒になりたいのであれば双方が歩み寄るのが愛ではないのかと説いた。それに対し、彼女も一度は歩み寄ってきたと力説してきたがそれは一度歩み寄ればそれで役割は果たしたわけではない、何度も何度も互いに歩み寄ることが大切で、臨機応変に対応するのが本当じゃないのかと突っ込んだ。
職業が嫌で正社員を辞めるなら理解できるが職業に問題はないのに一緒になる為に双方一番の努力なく契約社員になる、させるなんて発想は親からすれば良縁とは思えないとハッキリ伝えた。彼の表情は曇ったようだ。それが分かったのはその席で一緒に撮った写真でだった。
動画
食事が終わった後彼は新居に自身は事前に予約を入れていた駅前のビジネスホテルに戻りお風呂に入りベッドに入った。すぐ寝入ったが二時間ほどで目が覚めた。酔っぱらった時あるあるだ。深い眠りにはならない。
暫くは眠れないと悟り携帯を手にした。動画を何本か観たがふと飲み会で撮った写真を開けた。そこには作り笑いしている息子がいた。それを見てそうさせているのは自身だと自覚した。それまでの流れを考えれば当たり前だと頭では分かるが心に響いた。
その後動画を流していたがその中でよく詳しく覚えていないがある恋愛悩み動画を観て自身の行動を変えなきゃと突然思えてきた。前日撮った息子の作り笑いも同時に頭に浮かんできたことも影響している。
覚悟を決める必要がある。
どんなに彼女の言動が自身の性格に合わなくても、親が思う子への心配が富士山並みに大きくとも、とりあえず自分の見解、感覚は表現し切ったのだ、判断、責任は彼にある。そこは線引きをして彼らの結婚を前向きに捉え行動していこうという覚悟だ。息子に作り笑顔をさせるために育てたわけじゃない。
自身の感覚はそう簡単に変わらないだろうけれど、具体的に行動をしていこうと決めた。その内心や感覚も柔らかくなっていくだろう。
取り敢えず、ゴールデンウイークに彼らと食事をしようと思う。娘夫婦と同じように焼き肉店がいいかな。
世間は”新年度”が始まった。それに乗じようと思う。すぐにその覚悟を忘れないように。