友人の勧めで「成瀬は天下を取りに行く」を読み始めた。本屋大賞ノミネート作品だ。

青春時代をどのように過ごしてきたかなぁと時々自分と照らし合わせながら読んでいた。以下ネタバレあり。

幼馴染

最初幼馴染島崎の成瀬に対する感情を理解できなかった。幼馴染なのに一緒にいないの?と。

島崎が説明する自分の立ち位置に関することは女子あるあるだ。誰とグループを作ろうとか、ハブられないようにしないととか、一人の子に声をヘタに掛けて頼られたらどうしよう、そのことで自分のグループの他の子に変に思われたらどうしようとか。どの時代もそこはあまり変わらないのだと思った。

余談だが、ここまで書いて来て気付いた。周りのバランスを気にする人と自分の”好奇心”に忠実な人とは行動パターンが違ってくるから程よい距離感があって当たり前なのだと。自分のことを話すと、ボーっとしていた幼い頃の自身(今も少々💦)は頭の回転の速い幼馴染に合わせることが必然だった(幼稚園からそれが癖になっていた)。大学生になって自身の下宿を彼女がその友人とのたまり場にし、それもそれが当然と言わんばかりだったから嫌気がさし絶縁した。どちらか一方が合わせる関係は一生は続かない。

そんな中閉館する西武百貨店大津店にTVロケが入ることで幼馴染の関係に変化が訪れる。更にM1挑戦というビッグチャレンジをすることになる。無謀だと思う島崎を引っ張る成瀬。いつしか島崎はその世界に引き込まれていく。

心残り

マサルと敬太の話になって何だか読む速度が低下した。繋がっていくのだろうと思っても切り替えるのに時間がかかった。

西武百貨店大津店での思い出の一つ、小学校時代転校していった同級生タクローとの心残りの話になる。ストーリーテラーの敬太はTwitter名を”タクロー”にするほどだ。

西武百貨店大津店の階段でタクローの皆で遊びたいという提案を順番にゲームボーイを楽しみたい他の皆が断ったことがマサル、敬太の心残りになってしまった。その理由はタクローが次の日転校したからだ。彼の気持ちを思うとマサル、敬太の心はギュッとした。

西武百貨店大津店閉店を期に同窓会を決めた彼らはタクローをネットを駆使して探し始める。

繋がる

他のエピソードもあるのだが自身に響いたのは”明日があると思うな”というメッセージだ。

高校三年生になったある日成瀬は島崎が父親の仕事の関係で東京に引っ越すことを聞く。それから成瀬が不調になる。本人はその理由が最初分からない。戸惑う。勉強しても頭に入ってこない。数Ⅰ問題も解けない。早朝のルーティーンも崩れる。

また彼女は島崎に”ホラ吹きだ”と言われ自分を振り返る。宣言したことを続けないことに島崎がイライラしていたのだと知る。

余談だがそのことに関して成瀬に強く共感した。学歴や地頭の良さはまるで違うが成瀬の”たくさん種をまいて、一つでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験は全て肥やしになる”は同じ考えだ。ブログ書いたり、芸能事務所に飛び込んだり、ラジオアプリで話してみたり( *´艸`)まだ花は咲かないけど(≧◇≦)他の人から見たら何事も途中で投げ出す人だと思われているかもしれない💦

大津市の催し等で彼女たちは敬太と出会っていたのだが、島崎と上手くいっていないと話した成瀬に敬太は自分の体験を話す。気まずい別れ方をしてから相手を探し続けやっと会って心を通わせるまで30年間かかったと。

それを聞いた途端成瀬は島崎に会いに行き心を開いて話し、流れで夏祭りで一緒に漫才を披露することになった。ところがその舞台後に成瀬は解散宣言する。島崎は絶句する。コミュニケーションが得意ではない成瀬は物理的に離れることが理由で勝手に解散と決めつけていたのだ。

当たり前にあることが突然ぷっつり切れる思うと激しく動揺する。明日はどうなるか分からないと思いコミュニケーションを取っていた方が後悔は少ないかもしれない。すぐに解決していった方がワクワクドキドキが多い人生を歩めるのだと改めて思わされた作品になった。

失って初めてその価値に気付きたくない。失う前に気付きたい。長く生きているとそれを意識していても同じ様な経験を繰り返してしまう。

以前より薄れつつあるその意識に喝を入れる為この作品が目の前に現れたのかもしれない。