検診結果を受けた9月末から11月18日まで死を意識して生活した。結局は経過観察となったから夜は寝られるようになった。でも心は晴天とはならず何か霞掛かったような感じだ。今回はそれがきっかけで愛を感じた話。
母
数年間の検診結果をストックしている病院でCTを受けて帰ってきたその日の夕方、偶然にも掛かってきた電話で打ち明けた。午前中電話したのに居なかった、何してたの?と聞かれた。結果がはっきりするまで黙っていようと決めていたのに、口ごもる娘に容赦なかった。嘘をつくのも変だなと思い伝えた。
言葉を失っていた。おしゃべりな母に口止めするのは無駄なことだと思いながらも他言無用と伝えた。心配かけるのは嫌だとかそういうことじゃない。自分が他の人から自分の身体のことを思い知らされるのは絶対に嫌だった。忘れることが困難な問題を少しでも忘れている時が万が一あったとして、そんな貴重な時間を過ごしている時に電話やSNSを通じて事情を知った人によって認識させられるのが怖かった。心を守りたかった。だから内緒にしたかった。まだ迷惑を人に掛ける段階ではないとも感じてのことだった。
数日後掛かってきた電話で、子どもたちには知らせた方がいいのではないかと言われた。最初はそれを拒否していた。母の、”一人で抱え込まない方がいい、子どもたちも成人しているし初めはショックを受けるかもしれない、でも辛さを一緒に持ってもらった方がいい”と言われて心が動いた。この助言が後で自分にとって最高のプレゼントだと実感することになる。
娘
隣町に一人暮らししている娘は一週間に2,3回は夕食を食べにくる。帰りは車で送っていくことが多い(時に拒否されることもあるが(笑))。彼女に話したのは夕飯後車で送っていく車中で。アパートの前に着くと彼女の眼は腫れあがって涙をぬぐうのを忘れたのかほっぺたが水浸しになって涙が大量に下に垂れていた。可哀そうなことをした。何とか涙を止めなきゃと思った。
その日、後から聞いた話だが大学生の時から繋がっている携帯ゲームで知り合った30代男性にすぐにこのことを相談したとのこと(そっちの方が心配だし気がかりなことだ)。メンターのような存在なようだ。彼の経験からその数値は自分も若い時に経験したことがある。多分大丈夫。と彼女を慰めたとのこと。それを聞いて自身もその情報に藁をもつかむ思いで受け止めていた。一時でも救われた。
大腸検査に付き添ってくれた時、その横顔を見てふと、綺麗だねと声を掛けていた。その自分に驚いた。素直な自分が嬉しかった。彼女は目を潤ませていた。
息子
同居している彼にはそのタイミングをはかりかねた。おちゃらけた雰囲気じゃだめだし、ゲーム後の興奮した時ではないような気がしたし。ベッドに横になってタブレットを眺めている時にした。自身の部屋へ呼び出し話した。彼は職場での愚痴を聞かされた体で自分の部屋に戻っていった。そんなもんかと半ば拍子抜けしてしまった。
それからというもの何かあれば”ポリーペスト”という造語を私に投げかけ、からかうように話してくるようになった。心が軽くなる自分を感じた。彼はその効果を見越していたのだろうか。
大腸検査の結果を10月末聞きに行った。彼も付き合ってくれた。一人では受け止めきれないかもしれないと思い頼んだ。結果は病理とカメラでの視覚での診断では陰性だった。心から嬉しかった。
帰宅した後彼はバイトに行った。帰りがやたらと遅かったから先に就寝した。朝事情を聞くと仲の良いバイト先の支配人と仕事終わりに食事を共にしたとのことだった。それにしても非常に遅かったよねと問うと言いづらそうに”支配人の前で泣いてしまったんだ”と話してくれた。母親の健康のことを話していたのも驚いたけれどそれ以上に彼の心に物凄いストレスを与えていたんだと思うと胸が締め付けられた。
表現
一か月半、自分でも意識しないうちに職場での言葉数が激減したと今になって思う。
九月末で子どもの学費を捻出するため転職を決め退職した同僚の影響もあったと思う。検査や診察(担当医師の診察曜日が休日とは合わず)の為数回お休み、もしくは半日出勤を何回か繰り返していた為繁忙期手前で辞めるのではと懸念された。”辞めないよね?”と。辞めませんと伝えても職場に余り良い雰囲気は流れなかった。陰口がひどくなっていると感じた。後輩の反応で分かった。
経過観察が決まった翌日の先週金曜日、自身と育った環境が少し似ていると感じていた20代の後輩と一緒に仕事をした。
仕事が終わり少し待ち時間があったその時に、彼女に自分の仕事着とネームプレートが無くなり心が不安定になっていると告白を受けた(後で分かったことだがその反応で”その人”を探しているのかなとも思う)。心療内科に前の週にかかったことも教えてくれた。絵の才能に溢れた彼女はやはり繊細なのだ。
打ち明けてくれた彼女に自身も検診結果に苦しんだことを告白。私の悩みは大したことないですねと言っていた。大きい小さいはないよと伝えた。自分も彼女に伝えることで解放されている。
驚いたのは今週月曜日の職場の雰囲気。室内の空気が土留め色から薄ピンクに変わった(笑)。自分の心の持ち方もあるのだろうけれど、それだけじゃない。ネットワークの広がりの凄さを感じた(#^^#)
健康
直近の過去一年半の間、人間関係に悩み眠れない日々を過ごした。そうするつもりではないのにそうなってしまう現実。それも影響していると感じる。
今回のことで健康を維持することが何よりも大切だと実感した。心は体に強く影響する。その逆もしかり。
最近母からこのことを聞いた叔母のショートメールの中の、”健康であれば辛い現実も何とか受け止めて、前向きに生きる知恵も生まれてくるというもの”という文章が心に刺さった。叔母の愛情を感じた。只、辛い現実がストレスと生み、健康を害するのだとも思う。その悪循環を断ち切ろうと思った。
今回の経験で打ち明けることの大切さ、頼ることの大切さを知れた。これからも色々なことが起こってくるだろう。自分自身の頑張りだけじゃなく、周囲の愛や知恵でそれを乗り越えていこうと思う。