黒留袖がクリーニングから手元に戻ってきた。
先程仕付けを取った。取るのに思った以上に時間がかかった。疲れた。
業界
見積書の日付を見返すと6月30日とある。洗い張に五ヶ月かかったことになる。
洗い張は着物を解体し一枚一枚水洗いをする。そして今回自身の着物はカビ取り、滅菌加工する。また色がところどころ黄色に変色した”白いはずの”裏地(?)を新調した。このような作業にお金と時間がかかるのは当たり前だ。長襦袢も新調し合わせて50万円弱かかった。
もう少しお店を選べばよかったなと後悔しているがその時は調べるのに疲れ切っていた。それに店頭で二人の店員と先生と呼ばれる請負業者の三人に囲まれ詰められた。抵抗?を諦めてお願いすると決めたあとすぐに接客の評価を店員の前でネットで応えさせられた。強引なやり方だ。もういいやと投げやりな気持ちになった。早くこの状況から抜け出したい思いが勝ってしまった。まんまと”術”にハマってしまった。
この店の前に別なお店に着物のクリーニングの件で問い合わせた時のことを思い出した。電話番号は相手に通知し名前は伏せた。担当者はとても感じが悪く、言葉遣いも客に対するものとは思えない程上から目線だった。そしてしつこかった。二度ほどそのお店から電話がかかってきたのだ。電話番号を通知設定はしていたもののそれはあくまで不審な電話ではないことを示す意味があったからであって電話をかけて貰う為ではない。会話の中で電話番号を告げてはいないのに勝手に電話をかけてきた。二度目の電話で”どうしてもお名前を伺うことはできませんか”としつこかった。申し訳ありません(教えられない)と伝えるとガチャンと耳元で切られた。
この業界は先細っているのか。強引な接客をする人が多いのかもしれない。不快だ。
救いは直接対応してくれた若い店員だった。娘の結婚式で着る予定だと伝えると余程のことがない限りは陰干しで閉っていいと伝えてくれた。彼女だけが良心的だと感じた。
万が一のことがあって汚れた場合のクリーニングは別の業者にお願いしようと思う。
母
母は何事もお金に関しきっちりしている。自身が40代半ば過ぎた頃だっただろうか”ケチ”(倹約家)だと分かった。それまでは全く感じなかった。実はショックだった。
例えば排水溝水切りかごに付けるネットを色が変わるくらい使い続ける。汚れや匂いより節約の方が優先されるなんて考えられなかった。父の遺産を一般的な受け取り割合よりずっと多く受け取っているはずなのに…でもそれは人に迷惑をかけるものではない。
ケチは人を不快にするケチとそうじゃないものがあるようだ。迷惑や不快感を与えたり極端にバランスを崩すような自分に有利な支払いには母は嫌悪感をあらわにする。きっちり支払わないと気持ちが悪いそうだ。
そんな母は今回もそれを発動するようだ。全額に近い金額を支払う意思を伝えてきた。
数十年前の下の弟の結婚式で着用した黒留袖と長襦袢をクリーニングに出しておくから置いておきなさいと娘の懐を案じて放った言葉をはっきり思い出したらしい。正確には50年程綴った日記を見返したみたいだ。日記によるとクリーニング出し忘れたのは弟の結婚式の数日後祖母が亡くなった為大忙しになったのが原因と考えたようだ。自身も祖母の亡くなった日をすっかり忘れていた💦
優しい気持ちになった。理由を知ることって大切だ。
出来栄え
お店の店長は洗い張りをすると着物が蘇ると言っていたけれど、仕付けを取る為専用ハンガーに掛けて日に当たる着物を見ると若干色が褪せてみえる。残念な気持ちになった。
祖母の選んだ着物じゃなかったら新調していたかもしれない。今回の件自分をこれでよかったんだと納得させるのにもう少し強い理由が必要になってきた(^▽^;)
あと10日ほどで本番。主役じゃないし良しとしよう。今自分を強引に納得させている(≧◇≦)