眼瞼下垂手術を受けて二週間が経った。まだ瞼に腫れが大分残っている。自分の顔に慣れない。最初の頃を思えば随分見慣れてはきたものの前の顔の方が良かったとまだ少し思ってしまう。

経緯

職場で眼瞼下垂手術を受けた人が二人いる。一年半前に受けた今は転職した7歳年下の女性ともう一人は一年と少し前に決断した7歳年上の先輩。経験者がいたからハードルは低かった。

左瞼の上にほくろがあったことがきっかけだった。以前は瞼の中央に位置していたそれは段々下に移動して(実際は皮膚が垂れ下がってきて)視界に入ってくるようになっていた。数年前夕陽を見た時影が映ったことで気付いた。”逆さ富士”と名付けた。

実家に帰省する度母にそれを指摘され、たまに会うすぐ下の弟に”どうにかしたらぁ”と毎回言われうんざりしていた。迷惑かけてないのだからほっといてくれと言いたかった。肉親は遠慮なく躊躇せず表現してくる。苦手だ。特に弟。背が低く顔が大きいとか一度も言ったことないのに(笑)

気持ちと状況が重なって、瞼の上のほくろを取ることが第一目的で相談するために気軽に皮膚科と形成外科を併設している医院を受診した。同僚が手術を受けた先生の医院だ。眼瞼下垂であっても軽度ならほくろ除去だけにしようと思った。

評判の先生にお会いするなり額に手をあてがわれ目を開けてみてと言われた(大分せっかちだと後で分かった)。開けようとしても開けられなかった。自分で目を開ける力はほとんどなかった。開いて3㎜。額の力で目を開けてるから頭が痛かったり、肩が凝ったりするんだと説明を受けた。原因の一つにハードコンタクトレンズの長期による使用を上げられた。30年以上使用していた。軽度ではなかった。眼瞼下垂手術前提で話が進められていった。

<思えば肩凝りを感じずに生活するため色々な努力を重ねてきた。朝ストレッチをし、夕食後はウォーキングをし、毎日半身浴をしながら肩回し各15回、時々ヘッドマッサージ、週末はバスソルトを入れ発汗を促す生活。それでも毎月行く美容室で肩を揉まれると”凝ってますねぇ”と言われる。このルーティーンを疎かにすると頭痛がひどくなりそれと同時に吐き気に襲われる。そうなると寝られなくなる。薬を飲んでも効かない。バファリン飲んで戻したこともある。>

ものすごいスピードでスケジュールが決められていった。流れに身を任せていいのかなと思いながらもストップをかけなかった。普段は慎重な自分だがこの時は違った。瞼の上のほくろは切開するから傷が残る、それならば眼瞼下垂手術が自分の症状を改善するのに最善の方法だと思い決断した。

当日

13時予約。時間の15分前に到着。術室に通された。

血圧計、鼻に酸素吸入器が装着された。目に点眼麻酔を入れ、直後本格的な麻酔注射を目の周りに打たれた。目じりに打った注射針はまぁそんな感じよねぇ位な痛みだった。しかし目頭近くに打ったものは奥にグイグイ入ってきて体が自然に動いてしまうレベルの痛みだった(看護師が腕をポンポンしてくれたw)。

目の部分に穴の開いた白い布を顔に掛けられいざ手術。まずは右目から。暫くして焼き肉店の匂いがしてきた。同じ匂いなんだなぁと客観的に思えたことに驚き。血圧も安定していたように感じた。結構時間をかけていた。長く感じたのは緊張していた為だろうか。

続いて左目。これが緊張した。切ってそんなに経っていないのに痛みを感じた。麻酔を投入した。それでも痛みを感じた。先生曰くこんなこと初めてだ。そんなこと言わないでよと心の中でツッコんでた。緊張してきた。血圧が上がったと先生に言われた。先生も動揺していた。緊張感が伝わってきた。これ以上すると昏睡した例があるらしい一歩手前の麻酔を導入した。お酒好き?結構飲む?と言われお酒の話になった。お酒好きの人は麻酔がかかりにくいと言われた。そんなこと言われましても…と心の中で再びツッコみながら平静を保つべくお酒の話をつづけた。明らかに左目にかかる時間が右目より1/3の様に感じた。同じ術式か心配になり声を先生に掛けたがそれ以上話せなくなった。終わった時に麻酔が最大級にかかった。先生、せっかちすぎるんだよぉと心の中でぶちぶち思いながら手術台でぼぉとしていた。

帰宅後、普段通り過ごした。浴槽に入ったりシャワーは浴びれないので早めに就寝した。痛みは薬を飲んでいたこともあって感じずに眠れた。

対面

土曜日に手術したから日曜日はそのまま過ごし月曜日に受診した。眼瞼下垂手術を受けた人の動画やグーグルを検索していたからシャンプーハットを用意しなきゃならないのかぁでも自分で洗う自信ないから数日間洗髪を我慢した後美容室へ行こうかなぁとあれこれ考えていた。でも先生は、シャワーを浴びていいです、髪も普通に洗っちゃってください、シャンプーよりもヨードチンキなどの消毒剤の方がダメなんです、浴槽につからなければ他のことは大丈夫ですと説明してくれた。安心した。

新しい自分を見たのはその日の夜。前の自分とはまるで違っていて正直受け入れられなかった。事前にシミュレーションしていなかったのが反省点だ。先生がせっかちというのがポイントだったにしてもこういうことは他人任せにしてはいけないと思った。寝ぼけた瞼が好きだったのだと思った。のんびり優しい印象だったのだと感じた。我ながら愛着があったことに気付いた。

二週間たった今は慣れつつある。険しくなった目元だけれど、老けた印象になったけれどそれも表情でカバーしようと思えている。そう思えたのは職場の仲間のお陰。それはまた次回にお話ししようと思う。

奇跡

術後3日経ったお昼過ぎ、手鏡を見て前の方が良かったなぁと少しだけ後ろ向きな気持ちでいた時ふと肩と肩甲骨が非常に軽くなっていることに気付いた。奇跡的なことなのだ。3月下旬寒い日もあった。その日々をシャワーだけで、それもストレッチやウォーキングも出来ないのに(術後一週間は血行を良くする行為は禁止されている)肩周りが軽くなるなんてこれまで一度もなかった!!!感動した。やはり額の力で目を開けていたのが肩こりの原因の一つだったのだ。心を色々調整しなくちゃいけない日々は続きそうだけれど、何よりがちがちに固まった肩凝りを防ぐルーティンから脱出できそうだ。嬉しい。