先週水曜日映画館で「ディアファミリー」を観てきた。

実話をもとにしているとのことで興味があったけれど娘から誘われなかったら来年WOWOWで観ようかなぁくらいな感じでいた。彼女が主題歌?を歌うミセスグリーンアップルのファンではなかったら劇場で観ていなかった。

ハンドタオル

受賞祝賀会なるものの控室での大泉洋演ずる坪井宣政氏の斜め後ろからの”表情”だけでグッときた。喜ばしいはずの受賞の裏側にあった道のりが詰め込まれていた”表情”だった。

このシーンは序盤も序盤、何も物語が始まっていないのにその佇まいを見ただけで涙があふれてきた。凄い。こんなに早く涙が流れるとは予期していなかった。まだ誰もハンカチを顔に近づけたり鼻をすすったりしていない。どれだけこれから泣くことになるのか案じてしまった。以下ネタバレ注意。

昭和

その世界が全て懐かしいものだった。

坪井氏が引きずっていたスーツケースに釘付けになった。中学の時買って貰ったものとそっくりだった。色も車輪?が転がる音も懐かしかった。自分と同じものを持っている人をみると立場や状況で感情が違ってくるが、今回そのものに対する愛着が意外に強かったことを実感できた。

衣装、セット、全てが懐かしいものばかりだった。昭和を描いた作品に良く感じることだ。スーツケース以外に特に印象的だったのは玄関の外に置いてある泥落としマット?だ。実家にあった。幼い頃は何故ここに置いてあるんだろうとその理由が分からなかった。乗るとカンカンと軽い音がする。その音があまり好きじゃなく、又宙に浮いた感じがして落ち着かなかった。早く玄関に入りたくなったものだ。

クスッと反射的に笑ってしまったシーンがある。隣の娘が覚えていた。主人公が周りの人に頼みごとをした時”奢るから”と言い放った瞬間だった。後付けかもだが大泉洋の絶妙なタイミングが思わず笑いを起こしたのだと思う。今のドラマにはないセリフの一つ”奢るから”が新鮮だった。

心に残った言葉

”諦めない”という言葉はこの映画の土台になっている。途中何度か挫けるが家族が励まし前に進む。諦めないことが特に進歩には欠かせないことは分かっていても実行するのは難しいことだ。周りの理解と支えが必要になってくる。

心に残ったシーンがある。娘の心臓が10年持つかどうか分からないと医師から告げられ両親は必死になる。どのシーンか不確かでもしかして違うかもしれないが、確かパートナーの坪井陽子氏が”何もしない10年ともがきながらも前に進もうとする10年とは到達点は違うはずだ”と宣政氏を励ますその言葉が自分に対する言霊のように感じた。

必死に人工心臓開発に取り組む主人公に周りも動いていく。最初は期限が区切られてなく自分のペースで取り組む研究者たちに両親の必死さが伝わらなかったが段々と染みわたっていく。研究が途中断念せざるを得なくなり解散した後にも繋がっていく様は素敵だった。熱意は伝染するのだ。

閉ざされた世界

融通が利かないとんちんかんな狭い医者の世界に辟易した。ある程度のリスク回避は仕方ないと思うけれど一歩前に出る勇気がなければ進歩は望めない。

また、ある医大が先に研究してるものを取り扱えないと突き返さざるを得ない慣習?がある医者の世界は窮屈だと感じた。進歩する一番の”敵”だ。

親戚に医者がいるがどの大学出身かでその居心地の良さが変わるらしい。腕は関係ないらしい。そんな時々聞こえてくる話が頭に入っているからこの映画で観た医者の世界は大きな違いはないと思えた。本当おかしな世界だ。

回収

娘との約束が果たされたことが最後に描かれている。自分の生み出したものが命を繋げているだろうとは思っていてもなかなか実感は出来ないものだ。しかし感謝を助けられた本人から告げられるほど実感できる瞬間はない。

当初の目標は果たせなかったけれど娘との新たな約束が成されたことに悲しみを抱えながらも前に歩みを進めていく姿を涙無くして観ることが出来なかった。

余談だが帰り道の車の中”大泉洋”と名前が出るだけで娘と二人、”涙が出るよ~どうしてだぁ~”と涙目になっていた(*´Д`)