序盤は軽快に読んでいたがすぐになかなか読み進めることが出来なくなった。政治の話中心になったからだ。トイレ本に戻った。トイレに置いておけば1ページは一日読み進めることが出来る。前に進める。そんなにまでして何故読み進めるのかというと、単純に一巻が心を揺さぶったから。何度も泣いたからだ。いつかはそういう思いになれることを信じていた。
序盤
陸一心と江月梅との再会は感動的だった。二人が強く心が結ばれているのにそれを表にできない立場、状況が心をツンツンさせた。現世界では考えられないような状況だ。
日本人というだけで迫害され、自分と接するだけでも危険が及んでしまうそれまでの体験からすると陸一心が心をオープンにし、月梅の熱い思いを受け止めることのできないのは当然のことだ。でもそこにやるせなさと切なさが混じった感情を抱いた。
月梅のそれでも彼を求める心を止めなかった情熱にも惹かれた。過去彼の養父に彼の居場所を匿名ではあったもののその時代で手紙を送ったのは相当勇気が必要だったに違いない。最初は正義感からだったのだろうか。彼女の愛情が芽吹くタイミングはよく分からない。そもそもそんなことは説明のつかないことなのだ、きっと。
陸一心の命が危ぶまれた時周りにいる医師や先輩たちの政治観や思想に惑わされることなく命を救うことが大切と強く主張した彼女は賢者であり勇者だ。命と心を救った深い愛情に心打たれた。
無知
教科書や毎年八月に広島長崎で行われる原爆投下による被害者の追悼式典で第二次世界大戦の爪痕が残っていることは充分意識している。広島の記念館に行った時は一つのブースを見る度心がギュッとなった。
もう一つの戦争の爪痕をこの本は教えてくれた。自身が小学生になった頃に中国に遺留された孤児探しが行われていたことに衝撃を受けた。全く知らなかった。知らないことは恐ろしいことだ。
呼称は違えど史実にほぼ忠実であろうこの本は終戦前後の日本のことを教えてくれた教科書になった。
違う目線
第二巻に読みづらさを感じたのは人の情愛中心には描いていないからだ。第一巻は親子、男女の情や信頼に感動し涙した。第二巻では社会情勢やそれに影響された仕事中心の人間関係だ。その中に組み込まれていく生みの父親だと思われる松本氏の立場や心情も描写されている。
上の力が働いたとはいえ町の人を中国に送り込む手伝いをしたことが結局その人たちを終戦時のソ連の虐殺に合わせてしまうことになる。肉親を失った悲しみを背負い、更に人を送り込んでしまったという自責の念にさいなまれる。松本氏がそれから逃れるように生きていく様が辛く悲しくい。
出会い
多分新日本製鉄のことをさしているだろう東洋製鉄。大分後半だけれど、技術者と経済取引に才能ある社長とのやり取り、中国側と日本側の駆け引きが面白くなってきた。
高炉を作る技術が半端なく大変であったこと。埋立地を作るのに何本もぬかるんだ土地に杭を打たなければならないこと、その土地を選ぶのも検討しなければならない項目がいっぱいあること、淡水をどう確保するのか、どの資源を使うか、日本か中国か、値段交渉、何百社の規模で高炉を作っていくこと、詳しく頭に入ってこないが大変細かい手続き、判断、交渉、技術が必要だったことは感じた。
主人公陸一心はこの一大プロジェクトに参加していく。父であろう松本氏は東洋製鉄の上海事務所長に着任する。起工式でそれとは知らずに会話をする。中国語を話す日本人(松本氏)が疑わしいから調べろと上司に言われていた一心は距離をとって(疑念の目を向けていることを悟られずに)接する。そこにモヤモヤを感じる自分を抑えて次の展開に期待した。
読書時間
リハビリで肩を温めたり、電気をあてる時間を読書に当てている。これが意外にいい。読書を楽しめている。リハビリ時間が楽しくなってきている。
僅かな時間を有意義に過ごせてる感覚はここから生まれているのかもしれない。年末の準備を2日程前から始めているのはのこの影響かもしれない。今日はカーテンを洗い、窓ふきをした。