ここ二年毎月携帯料金に疑問を持ちながらも支払っていた。携帯料金はこんなに高いものかと思いながらもよく調べず払っていた。今考えると”面倒くさい、システムが良く分からない、紙の請求書じゃなくモヤっとする”が調べ切らなかった理由だ。過去何度かトライするも知りたい箇所に行きつかない。痒いところに手が届かないからイライラする。終いには大企業が詐欺行為などするわけないと思い込むようにして煩わしい作業を遠ざけていた。

圧迫

五月の請求に驚いた。携帯会社への支払いだけで7万円になった。その内”決済サービス”という項目だけで50,000円。何かの間違いでそうなったのか、翌月はそんなに行くはずないと思っていたら60,000円円近く請求がきた。いくら何でもおかしい、このままでは生活できないと思い必死に調べた。でもなかなか内訳が詳しく出てこない。”決済サービス”とは何ぞやから始めなきゃならなかった。携帯、タブレットのそれぞれの使用料金画面にたどり着くまで数日かかった。

何度も画面を行き来しやっとたどり着いた回線は息子の携帯番号だった。

”やっぱり”が第一声。落胆した。20代半ばのそれも就職している立場で親のお金を断りなく取っていく事実が金額より悲しかった。やっぱりと思ったのは彼が小学生の時お金がかかるとは理解していなかったかもしれないけれど自身の携帯を黙って使いネットゲームで課金した過去があった。その時は月7万円二か月続けて請求が来た(過去を遡れば毎月2,3万円使っていたと思われる)。成長できていないことを認めなければならなかった。

ブロック

自力ではブロックできないと分かった為居ても立っても居られず携帯会社に走った。

担当者は初め家族内での話し合いで解決して欲しいという、言葉は出さなかったけれど携帯会社がブロックしたくないようなニュアンスで話を進めてきた。こちらも必死になった。息子はどこまでも甘えてくる体質で強硬手段を取らないといつまでも請求されるのは火を見るよりも明らかだからだ。かといって逃げ道を与えてあげたいという気持ちもあり月2万円は枠を残したいと申し出た。しかしその問いに担当者の”決済サービスの枠10万円は変えられないです。10万円か0円です。”と言われ無言の圧を感じた。携帯上の契約は変えずに息子と話をつけろとあくまで家庭内で処理しろとの姿勢を感じた。トラブルを避けたいのだろう。でもそれがきっかけで自体が落ち着くまでは0円にしようと決意を固め、”支払いは自分なのにどうして契約を変えられないのか”と少し凄んだ。涙の訴えと言った方が近いかもしれない。生活がひっ迫する。

やっとこちらの必死さが伝わったのか担当者は上司と相談して息子の回線の詳細を調べ始めた。担当者が戻ってきて三つを機能しないように処理したと報告してきた。三つも?と不思議に感じながら詳細を教えてもらうと一つはクレジットカード(これは本人には渡していない)、お店などで使えるスマホ決済とあともう一つはネットでの決済だった。後者は頭になかったから衝撃を受けた。きっと高額な取引はネットでのゲーム課金だと察知した。本人は食費と申し立てて?いたのだ。食費等の生活費じゃなく彼女とのデート代でしょ!と心の中でツッコんでいたが遥かに想像を超えてきた。担当者もそのことを詳しく話してきたから間違いない。脱力感半端なかった。とても残念だ。

防御

携帯会社の担当者から止めたことを早く本人に伝えて下さいと言われたから帰宅してすぐLINEした。本人は覚悟していたらしくスンとしていた。

”実は(自分は)鬱だ。一か月夜眠れなくて病院行ったらそう診断受けた。診断書出して欲しいと言えば出る。でも何とか踏ん張る。”と衝撃的な告白を受けた。先生という職業は鬱になりやすいと周りの話や実際先生になった子を持つ親の悩みを聞いていたし、過去に遡れば子どもたちの小学校の先生も少なくとも三人鬱だったと噂ではあったがいた。常時上から目線で俺様気質の息子がその診断を受けるとは思わなかった。

話によるときっかけはある行事の打ち上げの時だということだ。お酒の席で一年目と二年目の仕事量の違いのことでぼやいたことがベテランの女性教師たちに反感を買ったようで陰口を言われ続けてシンドイとのことだった。お酒の席でぶちまけるとはと思ったけれどごっくん飲み込み、ただ聴いていた。学生時代飲食のバイト先のロッカールームで散々おばさんたちの悪口を聞かされ胸が悪くなっても何とかスルーしていたのにやはり標的になるとキツイのだろう。自分も標的にされたことを経験談として話そうとしたけれど序盤で拒絶された。嫌なことを思い出させることはしない方がいいのかもしれないと鬱の人への接し方を知らない自身は戸惑いながら再び言葉を飲み込んだ。

このことが夜眠れずゲームに没頭し課金しまくっていた理由の一つだ。悪循環を生んでいた。請求が来て青くなって調べて良かった。

訪問

電車、新幹線使って3時間。車で4時間かかるところに息子は一人暮らしをしている。鬱の人が一人暮らしは危険だ。丁度ryuchellさんの訃報が入ってきたタイミングだったから猶更超心配になった。

最初は金額的なこともあって車で向かおうと思った。でも帰りが祭日に当たり混雑を避けるため電車を選んだ。一日一便直通電車が運航するということでそれを選んだ。運賃は新幹線を使う行程より片道プラス1時間かかるが2,000円安い。指定席は取れず自由席で行った。指定席、自由席それぞれ一両だったからか始発で人でいっぱいになり人に酔った。今度行く時は車か新幹線を使いたくなった。

少し元気がないように感じる。覇気がないというか。それ以外は変化を感じなかった。普段とあまり変わらないところが鬱にはあるから接し方に戸惑うと聞いたことがある。本人が話し始めるまで家事をすることにした。水回りを掃除した。とても時間がかかった。買い物も行き、3日分位の食事を作った。夜は外に出て普段自分では食べられないであろう寿司、焼き肉を奮発した。滞在最後の最後にやっと”小ばかにしたいつもの軽いのり”の会話が少しあった。それで少しホッとした。

自分の体験談を押し付けないように、”大丈夫?””変わりない?”等同じ答えを結果催促するような内容の質問はしないよう気を付けた。でも気を付けてる雰囲気も完全に消すのは難しい。一緒に楽しみを見つけていく方がいいのだろうか。対応を勉強しながら取り敢えずは1日一言LINEしている。

サイン

人は動物だから危険を事前に察知する能力を持っている。野生動物とはその比ではないけれど今回そのサインを受け取ったと感じた。

今回眠れなくなったのが5月だとのことだった。自身に高額請求がきたのが6月中旬過ぎ。経済上のことが理由で動いたけれど結果子どもの病を知ることが出来た。様子を見ようと我慢したり面倒くさいと投げ出していたらもっと悪い状態になっていたかもしれない。変化の裏側には知りえない状況が隠されているのだ。これからもあまり神経質にならずに程よい間隔で対応しようと思う。

サインをスルーせずすぐ行動が出来て本当良かった。